早朝5時、まだ辺りが薄暗いなか、家族で営む麹屋の一日が静かにはじまります。大正七年、秋田県横手市増田町の羽場に創業した「合資会社羽場こうじ店」は、家族一人ひとりの小さくも確かな経験と気持ちを大切にし、地域の毎日に寄り添う“麹づくり”に、励んでいます。
大根、白菜、人参など、いぶりがっこをはじめとした漬物となる地元農家の野菜が穫れはじめると麹屋は大忙し。秋田の魚であるハタハタが揚がりはじめると、これまた麹屋は大忙し。つまり麹屋が動くということは、秋田の台所・食が元気で豊かだという証拠。麹屋というわたしたちの仕事は、この土地の食の豊かさを一番身近に感じさせていただける、貴重な現場なのだと思います。
ずっと、ずっと昔から、いつも雪国・秋田の台所にあり続けてきた「麹」の食文化。私たちはそんな麹を一過性の流行や発酵ブームではないところで、今までと変わらず守り伝えていきたいと思います。ただただ“おいしい”から「おいしい」と言っていただける、そんな素直な声のために、“麹づくり”の現場から、台所のお手伝いができたらうれしいです。